週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『トレインスポッティング』★★★★☆

 

若いからこそ逃れられない落とし穴の物語

 ダニー・ボイル監督作品は『スラムドッグ$ミリオネア』や『スティーブ・ジョブズ』が素晴らしかったので(どちらも★5つ)、結構楽しみに見始めた。

 確かにハードでかさつきながらも切実に生きるスコットランドの若者たちの姿を活写していて秀逸、なのだが、もう一声欲しかった、というところで★4つに。

 

 ベクトルとしては「殺伐とした若者たちの形にならない反抗」といったところ。こういったジャンルではディテールが面白いかどうかが鍵になるが、ドラッグに耽溺し壊れていく生活、それ以前にそもそも破綻している家族関係、友人知人ことごとく狂気じみている行き詰まり感、起きること全てがテンプレを超えたうんざりで、次第に笑えてくるところすらある。

 突発的な暴力と淡々とした味わいはたけし映画のよう、途中挿入される幻覚的なイメージややたらと目にこびりつく不安を誘う画面の作りはキューブリックのよう、感情の方向は『ファイト・クラブ』的と類似した作風は思いつくが、一つ特徴的なのは、舞台がスコットランドというところなのかも知れない。

 イギリスといえばロンドン近郊、未だに「遙か山の彼方」というイメージの強い土地(『スカイフォール』での007の出生地を思い出す)で生まれ育った、仕事も未来も夢もない人の人生観は、現在の閉塞感ある日本人でもなかなか想像出来ないものだろう。

 

 一貫した物語性は薄い。発作的なきっかけで事態は展開する。メインの筋立ては一応「主人公の更正」なのだろうが、基本的には「どれだけゴミためから逃げようとしてもゴミためが追いかけてきて囚われる」というお話で、最後の最後には自らゴミになり、終わる物語だろう。このどうしようもなさは、『キッズ・リターン』の観賞後感に近い。「クズでも立ち直れる」「希望はある」なんていうおためごかしは、彼らと同じように生きる人々には不要なのだ。「救いはない。けれど生きていくしかない」。

 もうひとつ食い足りない感は、むしろこれらの類似作のほうが、暴力も絶望も上回っているからかも知れない。20年後の後編を見るのが今から楽しみ。