『トランスポーター』★★★★☆
突然の超展開もまたよし、のステイサムアクション
いっちょアクション映画を、と思い選択。安定のジェイソン・ステイサムアクション映画で、かなりきっちり細かい心理の流れを作り込んでいるので好印象。主人公のキャラも上々なので、シリーズ化もうなずける。
ステイサムの作品としては比較的初期の作。とにかく職人気質の闇社会の「運び屋」が、とある「荷物」と出会ったことをきっかけに起こる事件を描いている。
この主人公の仕事人ぶりが冒頭シーンから炸裂するが、このキャラの描き方はリュック・ベッソンの脚本らしさを強く感じる。まずはとにかく、こいつはどんな奴なのかを強烈なエピソードとともにさらりと冒頭10分の間に描き出す。その哲学は「ドライバー版ブラックジャック」とも思ったが、よく考えたらブラックジャック自体が「医者×闇稼業」という斬新な組み合わせから成り立っているので、主客が逆だろう(笑)。
そしてこじゃれたフランスの風景、フランス人とのこじゃれた会話、からのじわりじわりと見せるフェミニストらしさ(古典的アクション映画の主人公は女性との関わり方にしくじって物語が進む)、爆発的アクション展開、と、きっちり無駄なく娯楽を続けていく。
正直、「風光明媚なフランスの観光地で闇の稼業をクールに行うイケメンがアジア系美女と犯罪に巻き込まれての逃避行アクション」というのは、アメリカ人男性の妄念を煮染めたような内容とも言えるが、ステイサムの抑えた演技と主人公のキャラクター性、無駄のないスタイリッシュなストーリーテリングが、やっていることほどの馬鹿馬鹿しさは感じさせない。
そして、ラストアクション。終盤20分ほどのバトルは、ある意味目を疑う展開だった(笑)。説明は困難だが、突然、超展開を始めるところがある。冒頭から比較的手堅く作ることで終盤の暴走を許容させるあたり、ちょっと『シン・ゴジラ』的かも知れない。
とはいえ、アクションの内容もアイディア満載で楽しい。短めの尺もちょうどよく、土曜の昼に気楽に観るには理想的映画。次作も楽しみ。