週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ゴジラ×メカゴジラ(2002)』★★★★☆

 

ゴジラ×メカゴジラ

ゴジラ×メカゴジラ

 

 強い意志を持った主人公による巨大ロボットものとしてのゴジラ作品

 あらすじ

政府は、対ゴジラ用兵器の開発に着手し、1954年に死亡したゴジラの骨をベースに生体ロボット、3式機龍(=メカゴジラ)の製造に成功、対特殊生物自衛隊の中に機龍隊が結成される。再び日本に姿を現したゴジラを超攻撃型メカゴジラが迎え撃つ。(amazonより)

 

 『デストロイア』以降のゴジラはほとんどリアルタイムで観てこなかったので、今回まとめて観ていくと意外なほど面白くて楽しい。ぱっと見のゴジラの外見やストーリーのコンセプトがライトで当時は観たくなかったのだが、なかなかよくできている。

 本作はまさに想像を大きく超えていて、大勢の登場人物を動かしながら無駄のない脚本、入り組んだ人間ドラマの作り方、ゴジラの恐ろしさ、そして、主人公の造形と演技の見事さが際立っていた。

 

 いうまでもなくゴジラの主人公はゴジラである。なので、人間サイドの主人公はあまり存在感がないことが多い。しかしながら、本作は釈由美子演じる自衛官メカゴジラのオペレータを務めるということで、直接ゴジラと対決する人間というなかなか珍しいポジションにつく。

 この主人公の演技が、失礼ながら驚くほどしっかりしている。当時の人気グラビアアイドルによる主演ということもあり、まあ、期待するのも無理があるというぐらいに思いながら身始めたのだが、きちんと自衛官らしさを感じる「少々堅物で真面目だが優しく、そして危険に立ち向かう勇気のある人物」という人物造形をきちんと表現していた。

 

 訓練シーンやアクションシーンもあるのだが、スタントを使っているとはいえ顔の見えるシーンも多く、そこもきっちりとこなしている。「それらしく」見せるだけでも大変なはずだが、違和感はなかった(もちろん演出のうまさでもあるのだが)。

 キャラクター設定的に寡黙、かつ表情も抑えめのシーンが多いのが奏功してか、ゴジラに尺を取られて人間描写が短い中でもどんな人物かよく伝わってくる。そして終盤の叫びを伴う演技も、「かっこよく叫ぶ」のは非常に難しいのだが、ちゃんと魂のこもった限界状態の人間の絶叫になっていた。

 

 主人公を今回女性に据えたのは、もしかするとハム太郎との同時上映という関係で、女の子にも楽しんでもらう目的だったのかもしれないが、見事に成功していると感じた。

 元ネタとしてはエヴァンゲリオンパトレイバーあたりだろうか。特にエヴァは、ゴジラの生体情報をもとにメカゴジラを作るという設定、終盤の展開からも強い影響を感じた。

 

 今回改めて、ゴジラというキャラクターで格闘シーンを演出することの難しさがよくわかってきた。そもそも、ゆっくり歩くことしかできず、放射火炎以外の攻撃法を持たず、使えても尻尾程度、という怪獣に、毎回華のある戦いをさせるのはとても難しいのだ。つまり、相手にどんな怪獣を配置するかで映画の内容がほとんど決まってくる。

 しかし、怪獣というのはほぼ意志や動機がない。なので外見上の多様性を出す以外、手がないのだが、怪獣を介在させながらもきちんと人間が戦う、という形式をとれば、わずか1時間30分程度のゴジラと怪獣の戦いにドラマをもたらすことができる、ということが本作を見てよくわかった。