『キングコング対ゴジラ』★★★☆☆
よくもないが悪くもない、ザ・怪獣プロレスにして昭和のコメディ
あらすじ
日本のテレビ局の思惑で、南海の孤島ファロから連れてこられるキングコング。そして、北極の氷が解けて蘇ったゴジラ。やがて両者は日本の地で衝突し、壮大な闘いがくり広げられる。(amazonより)
次のハリウッドでのゴジラ映画は『ゴジラvsコング』らしいのだが、こちらは五十年ほど前にすでに日本で実現していた二大怪獣対決もの。当時はキングコングのほうがネームバリューが高かったからか、コングの名前のほうが先に来る。
1作目の監督、音楽担当が復帰し、初のカラー作品、クオリティは2作目よりも大幅によくなった3作目、なのだが、とりたてて「是非観るべき!」というべきポイントもない。
ストーリーはキングコングの基本、「商業目的の一段がカメラを持って南方の島へ行ってそのまま連れ帰ってくる」の中に、ゴジラをねじ込んだような形。現代では絶対に出来ないような「南の島」の描写が出てくるが、伊福部昭による楽曲が強烈で印象深い。
前作(第2作)で北海道沖の島の氷の中に沈んだはずのゴジラは不思議なことに北極の氷の下から発見されるが、これはもう大した理由もなく日本にやってくる。ただ、今回は都会よりも田舎の大自然を闊歩しているシーンのほうが多く、悪くはないがミニチュアセットの迫力には欠ける。
そして対決。アンギラスほどダレはしないが、やはりキングコングが借り物の怪獣(アメリカの権利会社に金を払って使わせてもらっている)であることもあって、描写に遠慮があるのが「ゲスト」という感じで面白い。いかにも相手側に気を遣っているような、「いや、キングコングがこのまま負けっ放しのワケはありませんよ」みたいなセリフが頻繁に出てくるのだ。
マンガでたまにある、他の作品とのコラボ作品のような雰囲気で、失礼なことを言わせるわけにいかないのはわかるが、しかしこういうのはその手の遠慮が透けて見えると、普通にやるより面白くならない。どうして本作は『キングコング対ゴジラ』なのか不思議に思っていたのだが、向こうさんを立てるためなのだろう。本作でも怪獣の特性上、殴り合いつかみ合いが相次ぐのでゴジラの重厚さは感じられず、プロレスっぽさは強い。
というか、このあたりの対決を観てみると、平成あたりのゴジラシリーズのように、「ゴジラ主体で何をぶつけるか」という発想ではなく、どちらかというとほぼ対等な人気怪獣をぶつける(この次のモスラや、次の次のラドンのように)、アベンジャーズに近い発想のシリーズだったのだろう。
監督は1作目と同じなのだが、上記のような事情もあってか、雰囲気は昔の日本のコメディ映画、といった感じで、愉快なところは現代の視線からも多数あるものの、深み厚みは特にない。1作目のような哲学は付けるつもりすらなく、完全なお祭り映画として制作されているのがわかる。
ただ、登場人物の描写はなかなかしっかりしていて、どのキャラクターも印象に残るのは好印象。特に製薬会社の宣伝部長は強烈にキャラが立っていて、あくどい割りに憎めないのはジャクソン版キングコングのジャック・ブラックに近いものを感じる。
言っていることもやっていることもろくでもないのだが、出てくるともっと観たい、と感じるのは、馬鹿馬鹿しいキャラでもしっかり演じきっている役者の技量だろう。意外と人間サイドのシナリオも、些細なお遊びに見えた要素がちゃんと伏線になっていたりもするので、決して手抜きではない。
昭和のゴジラはここからどんどん大衆向け⇒子ども向け路線をひた走るだろうが、果たしてどこまで観賞することが出来るか。さすがにこうも連続していると疲れてきた(笑)。