週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ファーゴ』★★★★☆

 

虚無を味わわせるノンフィクション風フィクション。しかし今は、もう一歩先が見たい

あらすじ

自動車ディーラーのジェリーが、借金返済のために軽い気持ちから、裕福な家庭で育った妻の偽装誘拐を工作し、義父からなんなく身代金をせしめようとした。誘拐を頼んだ大男と小男のコンビ。単なる偽装誘拐のはずが、運悪く死者3人を出す凶悪殺人事件に発展してしまう…。(amazonより)

 

 コーエン兄弟作品は『ノーカントリー』『バスターのバラード』あと一本なにか(印象が異常に薄い)に続いて4本目のはず。評判も高いので以前から期待していた作品。
 結論から言うと、非常に良くできていて期待はずれではなかったが、「ああ、こういう感じか・・・・」という感は否めない。これが筆者が映画ばかり見ているせいなのか、それとも時代性の問題なのかは難しいところだが。

 

 内容は、狂言誘拐の予定が妙なことから計画が狂っていき・・・・というサスペンス。間が悪く、良く言えば不器用、正直に言えば愚かな主人公が目先の金のために始めたくだらない行動、そして巻き起こる過剰なまでの暴力、という点は北野武作品を思い起こす。

 ボタンの掛け違い、などという上等なものではない、問題は登場人物ほぼ全員が自己を過信した愚か者である、というところにあった。

 

 冒頭で提示されているように、あたかもノンフィクションであるかのような妙なリアリティのある内容である(実際にはそういう体裁のフィクション)。巻き起こる出来事や劇中のセリフの生っぽさ、悲劇から受けるどうしようもない虚無感などは、現実で起きた絶望的な犯罪と近しいものがある。

 映画やドラマの犯罪は、何かを学ぶ余地があるように作られている。現実のそれにはそんな優しさはない。

 

 ただ、そのあまりの生っぽさが逆に、果たしてこれをフィクションで描く意味とは何かを考えさせる。「空っぽな犯罪」の空っぽさをピンポイントで抽出した物語なので、そういうストーリーとしての存在価値は大いにあるのだが。

ノーカントリー』の救いの無さとも違い、ただぽっかりと存在しているような不思議な味わいの事件。コメディ的な佇まいも、たけし映画と共通しているところだろう。

 

 もしかしたら筆者個人が寓話性を作品に求めすぎるのかもしれないし、あるいはこうしたタイプの「アメリカ犯罪ドラマ」を見すぎているのが悪いのかもしれない。

 見ごたえはしっかりあり、登場人物のキャラクターはどれも強烈かつ現実でも見覚えのあるものばかり。強いてまとめるなら、「男は皆愚か」といったところだろうか。なんだか文句を書き連ねてしまったように見えるが、良作です。おすすめ。