週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ストリート・オブ・ファイヤー』★★★★☆

 

  エンタメに全振りしてるとしか思えない作品なのに名画ランキングの常連で、かなり以前から気になっていた作品。ロックンロールの寓話、と評しているものが多いがその通りで、ストーリーもキャラクターも極めてシンプル、役者も特別芝居が上手いものもいないけれど、若さと勢いで魅せてしまう現代的な「神話」。

 

 やっていることは『マッド・マックス』シリーズに近いだろう。外部からやってきた用心棒。やることをやり、また去って行く。悪役は「悪人」としか言いようのない、哲学も論理もない悪漢たち。増えていく仲間はほとんど桃太郎のようになんとなくついてくる。主人公を、あるいはお姫様を慕って(ヒロインのファンだという女の子は何のためについてきたのだろう?)。物語としては完全に現代版西部劇。

 先にも書いたように、若手俳優ばかりで棒立ち・無表情の演技が多い。複雑な感情を表現出来ている者は誰もいない(唯一、ウィレム・デフォーだけがさすがの顔面力を発揮して印象に残る。この当時から悪役面だった)。だが、それが余計にこの物語を寓話に仕立てている。桃太郎に複雑な心理描写は必要ないのだ。

 

 映像も、個人的にこの時代、70~80年代の映画の画面が凄く好きなのだが、この映画はまさにその「好き」な要素が詰まっている。『カン・フューリー』でパロディ化されているような部分だ。

 CGで敷き詰めた画面じゃない(そもそもそんな技術ないけど)ので構図の工夫や明暗の演出の妙で飽きさせない。CGづくりの映画だと、どう考えても現実のカメラでは撮影不可能な画面の動きが頻発することが多く、そういう奇抜さで映画を保たせてしまうのにいい加減飽きが来ているのだ。フィルムだからこその絵の目の粗さもまたいい。なんというか、「つるつるしてない」感じ。

 光の使い方のうまさも特筆すべきものがある。白黒映画のような夜の描写。スモークの中から届く光源、影の色気。

 

 登場人物がカットが変わるだけであっさり翻意する、あまりにシンプルな幕切れなど気になるところはいくつかあるが、程よい短さも相まって好印象な作品。マッコイというサブヒロインが、安直なセックスアピールをしない戦う女性キャラとしてかなり魅力的だった。