『機動警察パトレイバー 劇場版』★★★★☆
パトレイバーと言えばゆうきまさみのマンガ、というのが小学校以来の筆者の思い込み、思い入れなので、押井守の映画は長らく観てこなかった。機会があって一気に2本視聴。
1本目は期待通りの「パトレイバー」だった。
作品内容は1989年の日本のアニメとは全く思えないとんでもなく先鋭的なテロの物語で、当時の一般市民は「OSの載せ替え」とか言われても全く意味がわからなかったと思うのだが、どうなのだろうか。まして、共振現象とか音声認識とかコンピュータウィルスとか、現代の映画で取り上げても斬新と呼ばれそうなアイディアが満載。
また、『シン・ゴジラ』でも出たモティーフだが、「すでに死んでいる人物による緻密な作戦の実行」「愚かな上層部に振り回される現場の人間が決死で戦う」あたりも熱い。天才による止めようのない悪に立ち向かい、自動で動き出す機械の恐怖、それに立ち向かうのはあまりに人間くさいヤツら。「観たいな!」と思う要素がこれでもかと詰め込まれている。
惜しむらくは尺が短いところか。100分弱しかないのにドラマが詰め込まれているのでやや駆け足の印象。犯人の作戦を遊馬が解き明かす下りも(これも『シン・ゴジラ』と同様だが)複雑な推理と専門用語の列挙をとんでもない短時間で、しかも映像的な説明も抜きにし、さらには小声でぼそぼそとやってしまうので一生懸命聞かないとよくわからない。もちろんわざとなのだろうけれど。
押井監督作品は『攻殻』『イノセンス』『ビューティフル・ドリーマー』『スカイ・クロラ』あたりは観ているが、それらの作品と比べても衒学的な語りのシーンが少なく、きっちりエンタメをやっているし、特車二課のキャラも存分に生かされているいい脚本。でも松井刑事たちの捜査の下りは『うる星やつら』を思い出す幻想的な日本の街の描写で、それも程よい長さで見やすい。いい意味で邦画エンタメらしい良作でした。
2作目でも感じたが、鳥を大きく扱う演出は何なのだろう。意味深だけれど。意志なきはずの者たちが突然人間を襲い始める、という意味でヒッチコックの引用かな。