『ナバロンの要塞』★★★☆☆
午前十時の映画祭でラインナップされていながら未見の作品。グレゴリー・ペックは『ローマの休日』『大いなる西部』でかなり好きな役者なので楽しみにしていた。
観賞しての感想としては、悪くなく、凄くよくもなく、といった印象。
古典的な名画として推薦される作品には大きく分けて2パターンがあり、1・普遍的な内容を描いており、現代で観ても深みを感じられる作品 2・当時は撮影手法やストーリー的に斬新で面白かったので当時楽しんでいた人にとってはいい思い出になっているから名画とされている作品 がある。筆者が観た印象としては、本作は2になると思う。
内容としてはスパイ物に近いだろう。第二次大戦中、ドイツ軍が構えたナバロン島の要塞が連合国軍の障害になっていた(特に島に構えられた巨大な砲台が)ので、島に潜入して破壊する、という、シンプルに言えばそれだけの話。そこへ向かうのが登山や爆破、殺人など様々なプロフェッショナル・・・・というチーム物の物語になっている。戦争について描いた作品だが、戦車が出てくる以外はおおむね、007等に近い。
アクションシーン・サスペンスシーン・特撮シーンには手に汗握る部分もあるが、あいにく物語そのものは非常に古典的で、問いかけに深みは感じられない。あくまで、悪しきドイツ軍を倒すため、愛国心を発露し懸命にミッションに立ち向かっていく軍人たちの姿を描いているだけで、それ以上の奥行きは存在しなかった。
時代的な問題もある程度はあるだろうが、古典でも『戦場にかける橋』のような、単純な善悪の問題に割り切らない内容を持った作品も存在する以上、この時代でも戦争について切り込んだ物語が描けなかったわけではないだろう。
美しいギリシアの海は見応えがあったが、作品としてはすでに古びてしまっている感は否めなかった。