『パンダコパンダ』★★★★★
高畑勲監督、宮崎駿脚本・画面構成・その他諸々、という短編アニメ作品。噂に聞いていたとおり、トトロやポニョの元ネタになるシーンが連続する小品ながら佳作。結局制作されなかったという『長靴下のピッピ』っぽいところもある。確か、当時のパンダブームに載っかった作品だと聞いた憶えがある。
続々と聞いたことのある声が登場し、ちょっとした警官の役が山田康雄だったりするのも嬉しい。設定は、日本のどこかの街(という設定ながら、町並みはヨーロッパ的だったりもして少し不思議)に住む女の子がひょんなことから一人暮らしをすることになり、そこにパンダの親子がやってくる、というファンタジー色強めのもの。
子ども向けの物語りながら、意外なほど物語内の心理展開は首尾一貫していて破綻がない。子どものパンダ(パンちゃん)はただかわいい小さなパンダで、特別真新しいところはないのだが、父親のパパンダのほうは非常に独特のキャラクターで、落ち着いた大人の雰囲気もたたえていながら、妙にパンダらしい理屈を優先したりするところもあって、論理の飛躍が面白い。『千と千尋』での悪夢的な雰囲気(その世界の論理で物事を考えている人物に言いくるめられる感覚)とも共通している。これはたぶん、「子どもから観た大人」像でもあるのだろう。
パンちゃんが学校に来るあたりのシーンは至ってベタなコメディで面白みに欠けるが、後半になるにつれ、超展開が連続して笑いが止まらない。不条理感というか、印象は宮沢賢治の児童文学に近い。どうして? なんで? と感じたとしても、「そういうものだ」と言われてしまえば納得する他ない。
ラストシーンは思いの外、落ち着いた幸福な世界に辿り着く。子ども時代に観ていたら大好きだっただろう作品。