『アントマン』★★★★★
連続ヒーロー映画視聴。以前から気になっていた作品だったけれど、とても気に入る出来だった。
「ただ小さい」というだけのアイディアではなく、小さいことをギリギリまで生かした展開、それだけでなく「拡大&縮小」を徹底してストーリーに組み込んで飽きが来ない。物語の軸も、家族を失った馬鹿な父親、という結構ベタなネタなのだが、娘役の子役がいい感じに歯が抜けていてかわいいのでイヤにならない(どうやって撮影期間中ずっと歯が抜けた状態にしていたんだろう。CG?)。
「小さくなるヒーロー」というともすれば馬鹿馬鹿しくなってしまう設定に、ちょうどいい「目的」が上手く機能していた。戦う目的が小さくなりすぎず、大きくなりすぎず、愛すべき娘のため、という感情移入しやすい動機がある。ファミリームービーとしては『ホーム・アローン』的な暖かさも備えている。そして同時に、技術そのものの恐ろしさ、「見えない襲撃者」ということがいかに役に立つか、のみならず恐ろしいか、という説得も、細やかに行われている。
MCU作品の中でもかなりSFとして・・・・それも、「すこし・ふしぎ」な作品として秀逸な作品だった。やっていることがドラえもん的なのだ。むしろ、『のび太の宇宙小戦争』的なのだろうか。顕微鏡で見る世界をちゃんと考証しながら描きつつ、「もし極限まで小さくなってしまったらどうなる?」という踏み込みも忘れない。
そしてキャラクターも含めて常にコミカルなのだ。主人公の相棒のおバカな泥棒の性格から、徹底して機関車トーマスを弄るギャグまで、笑わせつつもシリアスな物語から遠のきすぎない。その辺の味付けはエドガー・ライトが根幹に関わっているのが大きいだろう。かなりの期間、監督を勤める予定だったらしいが、彼が撮った本作も観てみたかった。たぶんもっとドライになっただろうけれど。
いろいろヒーローものを観てきてわかってきたが、ヒーロー映画にプラスして何か別ジャンルのストーリー構造を入れ込むと面白い作品になる。この作品はヒーロー×『オーシャンズ11』だろう。もしくは『ミッション・インポッシブル』。唯一惜しい、というか致し方ないけど心配なのは、虫嫌いの人は観ていてしんどいだろうな、ということ(笑)