『ソナチネ』★★★★★
ヒーロー映画が続きすぎて疲れてきたので久々にたけし映画。ずっと観たかったのだけれど、期待通りの大満足。
コミカルなパートと暴力的なパートはほぼ半々で、しかもいつどちらに切り替わるかわからない緊張感に満ちている。この二つの要素が常に均衡している。どちらもやっていることは刹那的で、虚無的だ。何かの意味を成すことは一度もない。
ヤクザ同士の抗争も、ストーリーの軸ではあるが、全く理解していなくても映画を観る上で問題はないだろう。物語のほとんどは主人公たちヤクザの「暇つぶし」に費やされる。その暇つぶしは、次の瞬間いつ死ぬかわからない状況で続く。一手失敗すれば殺されるかも知れない、事故死するかも知れない。
『アウトレイジ』はここで描かれていたことを形を変えて見せていたに過ぎない、ということがよくわかった。主人公は愚直な男で、器用に立ち回ることなど出来ず、いいように使われ、怒りに囚われ、人を殺して死ぬ。ただ、この作品での描写のほうが遙かに抑圧的で、日常の中に留まっている。だからこそ恐ろしい。
相変わらずヒロインが男性から観た置物としてしか機能していないのが残念だけれど、もうこれはこういうものなのだろう。名作でした。